吾輩は熱帯家の猫である3

部屋は、白を基調としたシンプルな作りだった。
フローリングや壁には先代の猫たちが引っ掻いて残していったと思われる、無数の傷があり年季が感じられたが、基本的には猫受けの良い雰囲気であったように思う。
中くらいの冷蔵庫ぐらいの大きさのケージと、食事と水が入れられる器が二つセットになったものと、トイレもそれぞれ三つ用意されていた。
ふくも同時にこの部屋に連れて来られたわけだが、私と比べると終始、落ち着いた様子で、最初でこそいくらか周囲を気にしてはいたが、すぐに部屋の雰囲気に慣れてしまったようだった。
思い返すと、船の貨物室の中でも近くにケースに入れられて居たはずだが、特に慌てふためく様子が伝わってくるようなことがなかった。
そんな堂々としたふくを見ているにつけ、私も元気を取り戻しつつあった。

どうやら私たちは保護されたのだということが初めて分かったのは、私たちより先に入居していた、トラさんからの話を聞いた時だった。
トラさんと私たちが最初に相見えたのは、私たちが部屋にやってきた翌日のことで、虎柄の猫を見たのは初めてであり、何より南大東島で見てきた猫たちよりも一回りも二回りも大きく、この世の中にはこんなにも大きい猫がいたものかと驚かされた。
だが、トラさんはその見た目に反してとても友好的で、離島出身の田舎者の私たちに対して紳士的に面倒見良く、そこでのルールや風習を色々と教えてくれた。