施設でのルーティーンは、朝は7時にキャットフードが30g提供されるのと、あとは、昼過ぎにCIAOちゅ〜るという猫のおやつがあり、飲み水に関しては毎朝一回は交換された。
自然の中で育ってきた身としては、外に出られないというもどかしさはあったものの、概ね満足できる生活を送っていた。
ある日、いつものように朝食後に談笑していると、トラさんがふと何か深刻そうにして話し始めた。
「そういえばあんたたち、自分たちの言葉に訛りがあるのは知ってたかい」
「そんなこと考えもしなかっにゃですよ。どこに訛りがあるか、教えていにゃにゃきませんかね」
「「た」の発音が少し違うのよね。喉を鳴らし過ぎてるんだと思う。まぁなかには、ここ那覇でも、訛り以前に病気とかで話せなくなった猫とか、生まれつき頭が良くなくて、猫語が不自由な猫がいたりするから、そこまで気にする必要はないと思うけど、ただ、今後、外の世界の猫たちとも関わる機会があって、多少、世の中のことを知っている猫と出くわしたなら、多分、あなたたちの訛りを不自然に感じて、そのことに関して聞いてくると思うわ。どこの出身の猫なんだって。そして、それだけならいいんだけど、最近、嫌な噂を聞いたのよ。この前もあなたたちに言ったみたいに、ここ数年、那覇の治安が悪化して、好戦的な猫たちが一部増えたせいで、過激な思想を持った猫たちのグループができ始めているらしいのよ。その思想というのが、都会の猫こそが新時代に相応しい存在であり、田舎の猫は都会の猫に追従すべきだっていうような思想なのよ。だから私、あなたたちのことが心配なの。いつか、そういう奴らに狙われて酷い目に遭うんじゃないかって」